誰かを呼ぶ声。
揺らされてる体。
見えてくる景色。
ここは―。
「ココ!ココぉ!」
「お母さん!?」
え…私、病気で死んで天国に行ってたはずじゃ…
今自分がいるのは、確かに母親の腕の中。
温度も、涙で濡れた感触もある。
じゃあ、どうして?
いや、そんなことどうでもいい。
ココは、疑問を振り払って少女の居場所を聞いた。
半ば強引に叫ぶように。
「ポポちゃんは!?ポポちゃんはどこ!?」
「あ…………」
セフィアは黙り込んだ。
がしかし、涙まみれの顔で微笑んだ。
哀しくて、優しい顔。
「あなたの中にいるわ。きっと、笑ってる」
「え?」
どういう意味?全然わからない。
私の中?
混乱してあたふたしているココに、アルスが優しく言った。
「ポポはね、居なくなってしまったんだ」
どこか、怒っているような、それでいて褒めているような。
そんな顔だった。
「お父さん…どういうこと?ねぇ!!」
「ポポは、お前の為に死んで行ったんだよ」
え…何?どういう意味?
「意味わかんないよ!ポポちゃんはどこにいるの!?」
二人は、悲しそうな顔をする。
なんでそんな悲しそうな顔するの?ねぇ。
悲しいのは私だよ。せっかく生き返ったのに。
ポポちゃん、いないんだもん。
泣き出しそうなココを、二人が抱きしめた。
あったかい。
「ポポは…ポポはね、死神様に頼んで、自分の命をお前にあげたんだ。その代りに、ポポは…」
「死ん…だ?」
死神様。聞いたことがあるわ。
死んだ人や悪いことした人の魂を奪うって―。
じゃあ、本当に―?
「止めたの。ココが死んだのは運命だって言って。でも、それでもあの子は、あなたに命をあげたの」
セフィアは、遠い晴れ渡った空を見る。
届かない、そこ。
「きっと、あなたがポポの立場にいたら、あなたはポポに命をあげていたでしょう。ポポもそう思ったのよ。自分の未来を諦めてまで、あなたに生きてほしかったのよ」

あぁ、そうなの?
ポポちゃん、私の中にいるの?

「…うん」
「ココ……」
雫が、頬をつたう。
確かにそこに生きていると、涙が教えてくれる。
確かに命があると。
「ポポちゃん…………」

私の中にいるんだよね。
じゃあ、聞こえるよね。

ばか。ばかばかばか。

勝手に命を捨てちゃ駄目だよ。

わがままはだめって、お母さんが言ってたでしょ?
あ、ばかって言うのもいけないんだっけ。

でも……。


ありがとう。大切にするね。



ポポちゃんの最後のわがまま、ずっと大切にするね―。











涙。ただ、涙が流れていた。
自分と同じ場所にいて、絶対届かない場所にいる少女に。












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